「塗布膜におけるぬれ制御・乾燥制御とトラブルへの対策・信頼性向上」をテーマとする通信講座を開講します。

通信講座概要

開講日  2016年9月23日(金)
通信回数 3回コース(2016年9月~11月の3か月)
主催   サイエンス&テクノロジー(株)
講師   河合 晃 教授

※詳細(申込み)は主催者ページをご覧ください。
http://www.science-t.com/st/cont/id/25619

通信講座内容

趣旨

近年、塗膜およびコーティングの高機能化と高品位化に伴い、欠陥を出さない細部にわたるプロセス制御が求められている。コーティングとは、塗液を液膜へと拡張し、溶剤を乾燥し固着させるプロセスと定義されるが、材料科学では、大きいエネルギー変化を伴う現象として理解できる。また、コーティングは広範囲な要素技術の集積であり、様々な視点でのアプローチが求められる。よって、プロセスの高精度化には、熱力学や流れ解析、および応力解析などの基礎技術の適用が不可欠である。
本講座では、塗布膜の濡れ現象や乾燥プロセスについて、基礎から応用まで広範囲の内容をカバーしている。また、トラブル対策にも視点を置き、解決への道筋が分かるように工夫している。穴埋め式の記述を採用するとともに、要所にはQ&Aを入れて自己学習効果の向上に配慮している。また、現場で直面する課題に対する質問欄も設けており、可能な範囲で講師の添削助言が得られるように工夫している。
本講座を、日々の開発製造現場における基礎として、役立てていただければ幸いである。

プログラム

第1講 塗布膜コーティングの基礎とぬれコントロール、およびトラブルを解決する方法

1.濡れ性を制御する!
1.1 表面粗さと素材割合によって接触角は変化する
1.2 表面の現象は表面エネルギーと表面積に強く依存する
1.3 液滴の濡れをエネルギー的に解析する
1.4 多くの濡れ挙動は分散極性と拡張係数により説明できる
1.5 撥水表面は濡れにくい
1.6 凸部では濡れにくく凹部では濡れやすい

2.表面および界面特性を制御する!
2.1 塗膜の付着性の最適化には表面エネルギーの極性成分の設定が有効である
2.2 ウェットエッチングは塗膜の内部応力でコントロールできる
2.3 シランカップリング処理により固体表面を疎水化できる
2.4 シランカップリング処理には最適な処理温度と処理時間がある
2.5 シランカップリング処理により密着性は改善するが付着性は劣化する
2.6 界面構造の解析により付着性をコントロールできる

3.濡れ欠陥の発生要因を見極める!
3.1 接着層には多くのピンホールが生じる ~VF(viscos finger)変形~
3.2 ピンホールは拡張モードで解決する
3.3 ピンニングにより濡れは支配される
3.4 塗膜の熱処理により溶液中の付着性をコントロールする
3.5 乾燥時の液体メニスカスの挙動を追う

□演習問題・添削□

●ポイント● ※第1講では、このようなことが習得できます。
濡れの概念、測定方法などの基本を学習できます。また、工業上で重要なシランカップリング処理について、基礎から学べます。濡れにまつわる様々な欠陥について、その発生原理から解決方法までを実験条件を含めて記述しています。これにより、実務における取り組み方を習得することができます。

第2講 乾燥をコントロールする、およびトラブルを解決する方法

1.乾燥プロセス・装置を制御する!
1.1 塗膜の乾燥による硬化メカニズムを明確にする
1.2 スピンコート法による塗膜の膜質は均一である
1.3 熱処理によって大気中の付着力は増加する
1.4 減圧乾燥によって塗膜の内部応力を精密にコントロールできる
1.5 超臨界と凍結乾燥法により溶剤のラプラス力を低減できる

2.塗膜の凝集性を制御する!
2.1 塗膜の表面には極薄い硬化層ができている
2.2 高分子膜の表面粗さをナノスケールで制御する
2.3 ナノマニピュレーション法により高分子集合体の凝集性を解析できる
2.4 高分子膜中へのアルカリ水溶液の浸透により応力が変動する
2.5 塗膜の熱処理により界面への溶液浸透は加速する

3.微粒子の凝集性を制御する!
3.1 小さいサイズの微粒子ほど凝集を支配する
3.2 微粒子の凝集はサイズに依存する
3.3 粒子サイズが小さいほど微粒子の凝集力は下がる

4.乾燥欠陥を抑制する!
4.1 塗膜のクラック発生を抑制する
4.2 乾燥むらは乾燥時の対流が原因である
4.3 ウォータマーク(乾燥痕)は対流とピンニングで生じる
4.4 塗膜内のガス発生により微小剥離が生じる
4.5 微細パターンにより微小気泡の付着脱離が解析できる

□演習問題・添削□

●ポイント● ※第2講では、このようなことが習得できます。
日頃、よく用いる乾燥プロセスのメカニズムを理解することができます。特に、残留溶剤の取扱いの重要性が認識できます。また、乾燥後の塗膜の凝集性の概念をナノスケールから解説しており、塗膜の耐久性に関わる対処法を習得することができます。

第3講 濡れ・塗布・乾燥の評価法および信頼性向上

1.塗膜の評価解析方法
1.1 屈折率により膜の浸透・膨潤が解析できる
1.2 原子間力顕微鏡力(AFM)により微細加工パターンの付着性が解析できる
1.3 原子間力顕微鏡力顕微鏡(AFM)を用いて微小固体のヤング率を測定す
1.4 原子間力顕微鏡力顕微鏡(AFM)でナノ気泡・ナノ液滴が解析できる
1.5 相互作用力を実測し付着力を推定する
1.6 液滴の瞬間濡れを計測する

2.微細パターンの付着を制御する!
2.1 リソグラフィにより高分子パターンは形成される
2.2 塗膜ラインパターンは先端から剥離する
2.3 微細加工パターンの付着性は付着面積に比例する
2.4 溶液中の塗膜パターンの付着力は乾燥雰囲気に比べて低下する
2.5 高分子パターンと基板界面は微細空孔 (vacancy)が形成されている

3.塗膜の実用分野
3.1 CVD膜の被覆性およびボイド形成は段差形状に依存する
3.2 薄膜の加工技術が半導体集積回路は発展を支えてきた
3.3 最先端エレクトロニクスにも塗膜が使われている ~MEMSにおける薄膜技術~
3.4 コーティング膜の信頼性を解析する

□演習問題・添削□

●ポイント● ※第3講では、このようなことが習得できます。
一般的になにみのない濡れ・塗布・乾燥に関する計測法について、その原理を含めて解説しており、実際の実験的条件において習得できます。また、最先端の微細加工技術について、その原理を解説しているため、これらの分野のノウハウを理解いただけます。